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改正区分所有法など成立

改正区分所有法など成立(2025年5月23日)

5月23日、改正区分所有法などが参院で可決・成立しました。
法令の概要などAIを使ってまとめてみました

はじめに:日本のマンション法改正の必要性

本SPAインフォグラフィックは、日本のマンションが直面する「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」という「二つの老い」の課題と、それに対応するための区分所有法を中心とした法改正の全貌を解説します。増え続ける老朽化マンションの問題は、個々の建物の安全性を超え、都市機能や地域社会にも影響を及ぼす喫緊の課題です。このSPAを通じて、法改正の背景、具体的な変更点、関連支援策、そして残された課題までを、視覚的に分かりやすく、かつ深く理解することを目的としています。

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老朽化する建物と高齢化する居住者、そして法改正へ

現状と課題:深刻化する「二つの老い」

日本のマンションは、築年数の経過による建物の老朽化と、居住者の高齢化という二重の課題、「二つの老い」に直面しています。これにより、適切な維持管理や大規模修繕、さらには建て替えといった重要な意思決定が困難となり、多くのマンションが機能不全に陥るリスクを抱えています。このセクションでは、統計データを通じてその深刻な実態を明らかにします。

築40年超マンション戸数の推移予測

国土交通省の推計によると、築40年を超える高経年マンションは今後急増し、2043年末には現在の3倍以上の約464万戸に達すると予測されています。これは、マンション管理のあり方や都市インフラとしての持続可能性に大きな問いを投げかけています。

修繕積立金の不足状況

適切な維持管理に不可欠な修繕積立金ですが、多くのマンションで不足が指摘されています。2023年度の国土交通省調査では、長期修繕計画を持つマンションの36.6%が積立金不足と回答しており、計画的な修繕の実施を困難にしています。

その他の主要な課題

  • 合意形成の困難さ:建て替え決議には原則80%以上の賛成が必要。
  • 所在不明区分所有者:連絡が取れない所有者が決議の障害に。1979年以前竣工マンションでは51.1%に所在不明者が存在。
  • 管理組合の担い手不足:高齢化により運営が困難になるケースも。

改正区分所有法:主要な改正点とその影響

マンション管理と再生の円滑化を目指し、区分所有法が改正されました(2026年4月1日施行予定)。このセクションでは、管理の意思決定をスムーズにするための変更点と、老朽化したマンションの再生を後押しするための新たなルールについて、具体的な改正内容とそれがもたらす影響を解説します。

2.1 管理意思決定の円滑化

共用部分変更の決議要件緩和

従来、区分所有者・議決権各3/4以上が必要だった共用部分の変更決議が、耐震性不足やバリアフリー化など特定条件を満たす場合、各2/3以上に緩和されます。また、出席者の多数決による決議も一部可能になります。

所在不明区分所有者への対応

管理組合の申立てに基づき裁判所が認めれば、所在不明の区分所有者を総会決議の母数から除外できるようになります。

問題ある専有・共用部分の管理制度新設

裁判所が管理人を選任し、所在不明の専有部分や管理不全の共用部分の管理を命じることができる財産管理制度が創設されます。

2.2 マンション再生の円滑化

建て替え決議要件の緩和(特定条件)

原則各4/5以上の賛成が必要な建て替え決議が、耐震性不足や外壁剥落の危険など客観的な緩和事由に該当する場合、各3/4以上に緩和されます。

一括売却・取り壊し決議の新設

従来全員同意が必要だった一括売却や取り壊しが、各4/5以上の賛成で可能になります。一棟リノベーションも同様です。

被災マンションに関する規定

大規模災害で被災したマンションの建て替え決議要件が各2/3以上に緩和。敷地売却決議の可能期間も1年から3年に延長されます。

賃借人の権利と契約終了

建て替え決議成立後、賃貸人は賃借人に契約終了を請求でき、6ヶ月後に契約終了。通常生ずる損失の補償義務があります。

表1:主要な決議要件の比較(改正前後)

区分所有法改正による主要な意思決定における賛成要件の変化を一覧で確認できます。

決議の種類 現行法(改正前) 改正法(改正後) 緩和条件
共用部分の変更(一般) 各4分の3以上 各4分の3以上 なし
共用部分の変更(特定条件) 各4分の3以上 各3分の2以上 瑕疵による権利侵害の恐れ、バリアフリー基準不適合
建て替え(一般) 各5分の4以上 各5分の4以上 なし
建て替え(特定条件) 各5分の4以上 各4分の3以上 耐震性不足、火災安全性不足、外壁剥落危険等
一括売却/取り壊し 全員の同意 各5分の4以上 なし
被災マンションの建て替え 各5分の4以上 各3分の2以上 大規模災害による被災
所在不明区分所有者の除外 決議母数に含める 裁判所の判断により除外可能 所在不明の裁判所認定

表2:建て替え・共用部分変更決議の緩和条件

建て替えや共用部分変更の決議要件が緩和される具体的な客観的条件です。

条件カテゴリ 具体的な条件 適用決議 緩和後要件
安全性 耐震性の不足 建て替え、共用部分の変更 建て替え:各3/4, 共用変更:各2/3
火災に対する安全性の不足 建て替え、共用部分の変更 同上
外壁などの剥落により周辺に危害を生ずるおそれ 建て替え、共用部分の変更 同上
衛生/機能 給排水管などの腐食により著しく衛生上有害となるおそれ 建て替え、共用部分の変更 同上
アクセシビリティ バリアフリー基準への不適合 建て替え、共用部分の変更 同上

関連法制度と支援:再生を後押しする枠組み

改正区分所有法を補完し、マンションの管理と再生を多角的に支援するため、関連法規の整備や国・地方自治体による様々な支援制度が用意されています。このセクションでは、マンション建替円滑化法やマンション管理適正化法の役割、そして具体的な補助金や税制優遇措置について概観します。

3.1 マンション建替円滑化法:再生経路の強化

「要除却認定」の条件緩和により、耐震性不足等の危険なマンションが認定を受けやすくなりました。認定されると容積率緩和や敷地売却決議(5分の4以上の同意)が円滑化されるメリットがあります。区分所有法が内部の意思決定を定めるのに対し、本法は外部的なインセンティブを提供し、再生を経済的に実現可能にします。

3.2 マンション管理適正化法:専門家支援の強化

地方公共団体の権限が強化され、管理組合への指導・助言がより能動的に行えるようになります。また、「管理計画認定制度」(認定で融資優遇等)や、民間団体を専門家組織として登録する「マンション管理適正化推進支援組織制度」が創設され、外部からの専門的支援体制が強化されます(2025年末までに施行予定)。

3.3 国および地方公共団体の主な支援策

マンションの再生を資金面で支援するため、多様なプログラムが用意されています。以下はその一部です。

マンション長寿命化促進税制

大規模修繕工事を行ったマンションの固定資産税を軽減。利用は低調(2023年11月時点で10棟)。

改修・解体に関する新税制優遇(提案)

国交省が2025年度税制改正で要望。事業協同組合による改修増築部分売却益や土地売却益を非課税とする案など。

マンションストック長寿命化等モデル事業(国)

計画支援:最大500万円/年(最長3年)、工事支援:総費用の1/3以内。

住宅・建築物安全ストック形成事業(国)

耐震診断・補強設計:国と合わせて2/3、耐震改修:国と合わせて1/3補助。

都市居住再生促進事業(東京都例)

老朽マンション建て替えの建設費一部助成(マンション建替タイプ:150万円/戸)。

マンション再生まちづくり制度(東京都例)

建て替え等合意形成費用補助:最大1,000万円/年。容積率緩和も。

これらは一部であり、他にも耐震改修、省エネ改修、合意形成支援など多様なプログラムが存在します。制度が複雑なため、専門家の活用が重要です。

今後の課題と提言:持続可能な再生に向けて

法改正や支援制度が整備されても、マンションの管理と再生には依然として多くの課題が残されています。資金調達の困難さ、決議後の実行における合意形成の重要性、制度悪用のリスク、そして何よりも居住者の積極的な関与の必要性など、根深い問題点と今後の展望、各ステークホルダーへの提言を考察します。

4.1 根強い課題

  • 資金調達と費用負担:建て替え費用は平均約1941万円/戸と高額。特に高齢者には重い負担。
  • 決議と実行のギャップ:決議要件は緩和されても、事業実行には反対者との交渉など、実質的な全区分所有者の「同意」が依然重要。
  • 緩和要件の悪用リスク:総会運営の工夫による意図的な少数決議や、賃借人の権利保護の懸念。
  • 居住者の関与と専門家活用:法制度は手段であり、最終的には居住者の主体的な取り組みと専門家の適切な支援が成功の鍵。

4.2 ステークホルダーへの提言

マンション管理組合向け
  • 長期修繕計画と財政評価を徹底し、修繕積立金を見直す。
  • 電子投票導入など管理規約を見直し、意思決定を円滑化する。
  • 国や自治体の補助金、専門家支援制度を積極的に活用する。
  • 透明性の高いコミュニケーションで全区分所有者の協力を得る。
  • 複雑な再生プロジェクトでは法的助言を活用する。
個々の区分所有者向け
  • 管理組合の総会や意思決定プロセスに積極的に関与する。
  • 大規模修繕や建て替えの費用負担を認識し、計画的に準備する。
  • 改正法と自身の権利・義務について理解を深める。
  • 自治体や専門機関から情報を積極的に収集する。
不動産デベロッパー・投資家等向け
  • 新制度を理解し、老朽化マンションストックの新たな投資機会を模索する。
  • 管理組合の健全性など、徹底的なデューデリジェンスを実施する。
  • 管理組合とのパートナーシップを模索し、専門知識を提供する。
  • 再生プロジェクトの社会的影響、特に賃借人の権利を考慮する。
  • 市場動向と政策環境の変化を継続的に監視する。

結論:共創によるマンション再生の未来

今回の区分所有法および関連法規の改正は、日本の老朽化マンション問題に対処するための重要な一歩です。意思決定の円滑化、法的対処の枠組み整備、そして財政的・専門的支援の拡充は、多くのマンションにとって再生への道筋を示すものです。

しかし、法制度はあくまで土台であり、その上に実効性のある再生を実現するためには、多くの課題が残されています。資金調達の壁、全所有者の実質的な同意形成の難しさ、そして何よりも区分所有者自身の主体的な関与と、管理組合の積極的な運営が不可欠です。

日本のマンションストックの持続可能性と安全性を確保するためには、区分所有者、管理組合、国、地方自治体、そして不動産専門家といった全てのステークホルダーが、それぞれの役割を認識し、協力し合いながら課題に取り組む「共創」の精神が求められます。この法改正を契機として、より安全で快適な住環境の実現に向けた努力が加速することを期待します。

本SPAの情報は、提供された「マンション管理と再生の円滑化に向けた法改正の包括的分析」レポートに基づいて作成されました。法的な助言を構成するものではありません。

 

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